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そして、それらを炬燵から布団を取っただけのローテーブルの上にどさりと放り出すと、一つの袋をむんずと取り上げ、両手で引き千切るようにして開けた。それから片腕を袋の中に突っ込むと、中身を鷲摑みして口中に勢い良く放った。ぼりぼりという咀嚼音が大きく響き渡る。
その人物は、自分と同じようにテレビのほうを見て座っているので、自分からはその丸まった背中しか見えない。が、手を伸ばせばその太いうなじに届きそうな距離なので、後ろ姿がよく見える。どっかりと座ったその、スウェットの上からでもわかる、ブラジャーからこぼれた背中の贅肉や、座布団と一体化した鏡餅のように大きなでっぷりとした尻まで。
醜い! と思った。目を覆いたくなるような惨状だ。
一方、自分の腕に目を移すと、同じようなスウェットから少女漫画のヒロインのような細くてきれいな腕がのぞいている。
自分はこっちなんだ、こっちなんだ、と心の中で言い聞かせた。あたしの夕飯はあれじゃない、海草サラダなんだ、と。
そして強く目を瞑った。目の前のこの人物が、消えてなくなっているように祈りながら。
そのまま何秒間か待って、目を開いた。だが期待もむなしく、彼女はやはりそこにいた。
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