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その一連の動作がまさに、自分の目の前でスローモーションで行われているかのように、よく見えた。運ぶときの、彼女の腕や尻の肉のわずかな揺れまで。
思わず身を乗り出した。
甘い麦チョコ。おいしい麦チョコ。どんなに食べたいだろう。
大量の麦チョコを摑んだ手を口の前に持ってきて、彼女は口を開いた。こちらから見えるのは彼女の背中だから、そんな光景は見えないはずなのだが、なぜかよく見える。
つい、彼女と一緒に口を開けてしまった。海草サラダはどこかに消えていた。
口内に一気に麦チョコを放り入れる。
口を閉じる。噛む。
チョコのほろ甘さと麦のカシリとした感じが、絶妙のバランスで口中に広がる。
カシ、カシ。おいしい、おいしい。
彼女が噛む。
自分も噛む。
カシ、カシ。
彼女の歯の動きと、自分の歯の動きが同調(シンクロ)した。
噛み砕いた麦チョコを飲み込む、ごくりという喉の動きまで。
と同時に、体内にカッと熱い何かを感じた。それは瞬く間に体中を駆けめぐり、細胞の隅々まで染み渡るようだ。
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