ユグ・ドラシル

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 正直、私は『ユグ・ドラシル』は問題作だと思っている。私の独特な恋愛観を全面に押し出しただけの作品だからだ。  実際『ユグ・ドラシル』の作中で主人公はこう自身に問いかけている。 『ーーなぜ、愛しい全ての人を愛し続けてはならないのか。 愛しい人は、一番しか許されないのか? 愛してよいのが一人でなければいけないなんて、なんて窮屈な世界だ。 ああ、なぜボクはこんな世界に生まれてしまったのか? ユウキもナオミもボクには選べない。』  この物語に答えを出してはいけない。それが私の考えなのだ。 「それに……アレは私のエゴをぶつけただけの駄作だ。読む価値なんて……。」 「アンタのエゴとか、そんなのは正直どうでもいい!」  不意に悠斗の語気が強まる。 「アンタが『ユグ・ドラシル』を書かないから、完結させないから、母さんの時がずっと止まってるんだよ!」 「由紀さんが……。」 「未完結の『ユグ・ドラシル』にアンタの影を見ちまってるんだ! 頼むから、止まった母さんの時を動かしてくれ!」  悠斗の必死の頼み。その姿は私に永らく置いていた『ユグ・ドラシル』の筆を執ること決意させた。
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