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「ねえ、守屋君! 待ってよ!」
いつものように一緒に下校中、私は長いストライドの彼の後を追う。
「守屋君ってば」
私の言葉に彼はようやく足を止めたが、そのまままた歩き始める。
彼の左隣に並んで、私は彼に言葉をかけた。
「そんなにイライラしたってしょうがないじゃない」
その言葉に、彼はものすごく不機嫌そうに言葉を返した。
「あれだけ夏休み、頑張ったんだぜ。なのになんでアレなんだよ」
「そりゃ……思ったほど点数伸びなかったみたいだけど、受験までまだ時間はあるのよ。これからが追い込みよ」
「これからって、もう高三の二学期だぜ」
彼の不機嫌は収まりそうになかった。
それで私は横で溜息をつく。
今日は二学期最初の模擬試験だった。
放課後の自己採点の結果、彼は思うような点数が取れなくて苛ついているのだ。
「結局、俺なんか何やったってダメなんだよ」
ぼそりと自嘲気味に彼は呟いた。
「ダメなんてことないわ。それに、なんかなんて言葉、使っちゃダメ」
その時、彼は吐き捨てるように言ったのだ。
「はっ! いつも優等生だよな。『神崎委員長』は」
「な……っ」
私は全身がカッと熱くなった。
「お前みたいにデキル奴に俺みたいな落ちこぼれの気持ちなんかわかるわけねえよ」
「馬鹿っ……!!」
パシン!と思わず私は、彼の左頬を叩いていた。
「たった一回、模試が悪かったくらいで何よ。そんなことで諦めるの? それに、守屋君にだって私の気持ちなんて到底わからない!」
私はぱっと身を翻した。
「守屋君の馬鹿!!」
そう言うと、私はその場を走り去った。
「神崎……」
そう呟き、私の後ろ姿を見つめている守屋君の姿など、私にわかるはずもなかった。
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