初めての喧嘩

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 その翌日。  第一時限目と二限目の休み時間、いつものようにお(きょう)と教室移動をしている時だった。 「神崎……」  守屋君が私の前に立っている。  つ、と視線を遣り、ふいと足早にその場を離れた。 「純!」  お杏が私の背中を追ってくる。 「純、どうしたのよ。一体」  お杏が私の隣に並んだ。心配そうにお杏が声をかける。 「彼と喧嘩でもしたの?」 「喧嘩?」 「そうよ」 『喧嘩』──────   そう言えば、夏休みにお付き合いを始めて、守屋君とこんな風にギクシャクするのは初めてだった。  喧嘩なんてしたくない。したくなかった。  でも、許せない。  あんな風に簡単に自暴自棄になった上。  優等生……神崎委員長……彼の声音が蘇る。  ああ、嫌だ。  こんな風になろうと思ってたわけじゃないのに……。  私はぎゅっと瞳を閉じ、拳を握った。  そんな私をお杏が心配そうに見守っていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加