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 彼のくれるキスは、いつもとても甘くて優しくて。ただそれだけでも目眩がするほど幸せだった。ただ只管に、しおんの存在を求めてくれていることが伝わって来るから。  和馬のキスは、「お前が必要だ」という意味だと、そう思っていた。  でも今、彼が与えてくれるキスは違う。「死ぬまで一緒にいたい」と。そう言葉にして伝えてくれていて、彼の唇からもその想いが溢れるように流れ込んで来る。こんなにも誰かに必要とされたことがあっただろうか。  誰にも見せたことのない涙が知らずに零れた。  薄暗いベッドルームだから、彼に気付かれていなければいいけれど。  甘いため息を織り交ぜながら、長いキスを交わす。 「…だから、な」  やっと唇を少し離して、耳元で彼のしゃがれた声が囁く。 「うん」 「その…指輪、買いに行こう」 「えっ」  思いがけない言葉に、嬉しさと驚きが入り交じって返答できない。彼は繋いだ手をぎゅっと握りしめる。 「なんつーか…そりゃ形としては違うかも知んねーけど」  和馬はもう一度しおんを抱きしめ、はっきりとこう言った。 「結婚してくれ」  現実的ではないけれど、直接的な言葉。
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