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会合
「じゃあ、さっそくだけど、大まかなストーリーの構成を考えていきたいから、なにか意見があれば言ってね」
部室の片隅で、ノートを開いてメモを取る態勢の先生と、三浜さんと鷹宮くん、そしてわたしの4人による話し合いがさっそく始まった。先生の言葉を皮切りに、まずは三浜さんが口を開く。
「御門さんと鷹宮くんの組み合わせだったら、最初から最後まで甘いストーリーか、あるいは幸せになれないとわかっていても惹かれてしまう展開のもの、どちらでもいけそうですね」
「そうね。ふたりとも実力は折り紙つきだものね……あ、ちょっと待って。甘々なストーリーは、前回の公演でやったばかりだし、華がある鷹宮くんの存在を存分に出したくなっちゃった。身分違いの恋の、悲恋な展開の方で先生的にはインスピレーションが沸いたんだけど、演じるふたりはどう?」
「わたしは、与えられた役を全うするだけですので、問題ありません」
「右に同じでーす。ちなみに、おれは貧乏な方と金持ちの方、どっちにする予定ですか?」
「そうねぇ。『椿姫』同様、高級娼婦と貴族のお話かしら…?」
結局、話し合いを重ねて、鷹宮くんは王子様役で、わたしは庶民の役になった。
出会いは、隣の国のお姫様との政略結婚をしたくない王子様が逃亡し、その逃げている途中で庶民と出会う。王子様の素性に本当は気付いているけれど、隠したそうにしている彼を察して、知らないふりをする。身元が不明のまま、同居生活が始まって、お互いに惹かれ合っていくけれど……といった内容。
「それで…罪に問われるほどの絶世の美女、というよりは、素朴な中に魅力が溢れてる感じを出したいの」
「…はぁ」
「その辺は、稽古でなんとかしよう! 御門さんなら、うまく演技してくれそうだし」
ーーーまぁ、自分のできる限りのことはしますよ。
「このあとは、三浜さんと先生で本は詰めていくから、ふたりはもっとお互いのことをよく知っておいてね」
「はい。2ヶ月後には隙のない関係になりますよ。ねぇ、姫苺先輩?」
「……」
ーーーこうなるから、イヤなんだ。のらりくらりと、ヒロインは逃れてきたのに。
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