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まただ。また、やってしまった。どうしていつもこうなるのだろう。私はただ、自分の気持ちを彼に伝えたかっただけなのに。何故いつも、告白する前に終わってしまうのだろう。
あぁそうか、友達を巻き込むからダメになるのか。いつだってそうだ。そうなることはわかっているのに、すぐに友達に頼ってしまう。結局は自分が悪いのだ。
いや、待てよ。本当にそうなのだろうか? ここまできたらもう自分のせいがどうとかの問題ではないのでは?
そう、きっと私は、神様から恋を成就させる役目を担い地上へと降り立った天使、いわば恋のキューピット。そう思えば今までのこと全て納得でき……。
って、んなもんできるかーい!!
心の中で盛大にちゃぶ台をひっくり返しながら、私はとぼとぼと学校からの帰り道を歩いていた。前方には仲良さげに歩く男女。一人は同じクラスの友達。もう一人は、さっき私が告白をしようと思っていた隣のクラスの男子。
放課後、その男子を呼び出したところまではよかったが、その後が悲惨だった。待っていた私を見て最初に彼が言った言葉。
「……もしかして、あの子が僕に?」
「え?」
廊下の角からこちらをちらりと見ている女子を指さした後、男子は私の手を取ると上下にブンブンと激しく振った。
「……うわぁ、噂って本当だったんだ。実は前からあの子のことちょっと気になってて。ほんとありがとう!」
「え? ち、ちょっと待って。噂って、なんのこと?」
「え、知らないの? 君、学校じゃ結構有名だよ。君と関わると恋が上手くいくってみんな言ってる」
待て待て、その話初耳なんですけど……?
確かに今まで数えきれないぐらいそういう感じのことがあったけど、まさか噂にまでなっていたなんて。何ですか、私は歩くパワースポットってやつですか?
あぁだめだ、終わった。告白する前に私の恋は終わってしまった。せっかく気合いを入れてここまできたのに。というか、ここまできたらもう私には一生恋愛なんて無理なのではないだろうか。きっと他の人の恋を助けるのが私の運命というやつなんだ……。
呆然としたまま立ち尽くす私の横を通り過ぎると、彼は友達の方へ颯爽と駈けて行った。
さよなら、私の○○回目の恋。たった一ヶ月ちょいの恋心だったけど、あなたのことを好きになることができてよかったよ。アデュー。
「……はぁ、それじゃあいつも通りやりますか」
私は無理やり笑顔を作ると、後を追うように二人のもとへと向かったのだった。
まぁ、そんなこんなで私の助力もあり、何だかいい感じになった二人の後ろ姿を見て再び落ち込んでいるわけだけど、正直自分の恋が叶わなかったことにショックを受けているのではなかった。だって、私ではないにしても、誰かが幸せになることはとてもいいことだと思うから。けど、このままでいいのかと不安にはなる。人の恋ばっかり助けてて、本当にいいのかと……。
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