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「じゃあ明日お昼頃に伺いますね」 金曜の昼休み。デスクで仮眠をとっていると、いつの間にか来ていた柏木さんの言葉で、俺はすっかり忘れていた彼女との約束を思い出した。 話を聞くと、住んでいるマンションはペット可だそうで、彼女はすっかり引き取る気満々のようだった。 だがさすがに二匹も引き取らせるわけにはいかないだろう。また別の人を探さなければ。 とはいえ、今夜はどちらかと最後の夜になる。今日はやっと待ちに待った週末だし、いいものを作ってやろうと意気込んで帰った。 「ただいまー」 「おかえりっ」 自分の声に被せるように返事が返ってきて、俺は玄関先で靴を脱ぐ動作のまま停止した。 今の声は何だ、幻聴か? 混乱する俺に追い討ちをかけるように、とたたたっと軽い音がして、廊下の先からひょこっと顔が覗いた。 「おかえりっ!」 天使が降臨した。
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