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「あいつと暮らすのもあと少しか」
いつものように暗い夜道を歩きながら、ふと寂しさを覚える。まだ四日だというのに、既に情が湧いてしまったようだ。
そう考えて、別のことを思い出し、コンビニとは別方向へ足を向けた。深夜まで営業しているスーパーに立ち寄る。
「いや、別に柏木さんが引き取るって決まったわけじゃないけどな」
値引きシールの付いた魚の切り身を手にした時、すぐ側で視線を感じた。顔を向けると俺を蔑むように見下ろしている大男と目が合った。
その時になって、自分がぶつぶつと声に出して呟いていたのだと気づく。
大きな男だった。俺でも172センチと小さいほうではないはずなのに。
30センチ近くは目線が上だ。そのため、余計に睨みつけられている怖気を覚える。
俺は引きつった笑みを浮かべて誤魔化すと、そそくさとその場を後にした。
「ま、あと数日間でも癒されるか」
気を取り直して、家路を急いだ。
「ただいまー」
意気揚々とリビングへ入った俺は固まった。
増えている。
俺の視線の先では、二匹の子犬がじゃれ合っていた。
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