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数分後には、香ばしい匂いが立ちこめ、小娘が皿を王様に渡しました。
皿には、輪切りにした玉ねぎがただ焼かれたものが載っています。
王様はその玉ねぎを口にぱくりと入れました。
焦げた苦味と玉ねぎの甘さが広がっていき、その両方がうまいこと合わさり、焼かれただけの玉ねぎはとても美味しいものでした。
「おいしいな」
王様はそう言わざるをえませんでした。
小娘は、にこりとほほ笑みました。
「王様。苦しみがない幸福の国はありがたいですが、苦しみを乗り越えて得る幸福は格別なのですよ。
どうか、玉ねぎを禁止しないでください」
「そうだな。苦味があることで甘さも引き立っている。
……どうやら、わしは勘違いをしていたようだ。
玉ねぎくらいの涙は乗り越えて、幸福を手に入れてもらうとしよう」
こうして、『玉ねぎ禁止之事』は廃止され、人々はおいしい玉ねぎを味わえるようになりました。
幸福には多少の苦しみも必要だ、という考えに至った王様は、玉ねぎが献立に使われる日には自ら包丁を手に取り、泣くようになったとか。
そして、御触書を読んでもらうために、国内全土、村はずれにも学校を作り、全国民が読み書きできるようになりました。
めでたしめでたし。
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