24人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
すると、その先に小さな木造りの家がありました。
料理をしているようで、トントンと刻む音が響いてきます。
王様は、その家のそばまで来ると、とても不快な気持ちになりました。
あの、涙をもたらす悪の野菜どくとくの悪臭が、鼻をかすめたのです。
もしや、と王様は家の中を窓からのぞきこみました。
見れば、小娘が泣きながら玉ねぎを切っているではありませんか。
王様は怒りをこらえて笑顔で、窓をコツコツと叩きました。
幸福の体現である王様は笑顔に努めなければならないので、怒ってはダメなのです。
窓の外にいる王様を見た小娘は、涙あふれる目をパチパチと瞬いて、しばし動きを止めて見つめると、窓へと向かってきました。
「どうして玉ねぎを切っていたのだ」
王様は即座に尋ねました。
小娘は首をかしげると、
「今日の私の仕事が、家族の夕食作りでございますゆえ」
と、答えました。
「そうではない。なんで、玉ねぎを使うのだ」
小娘の答えにいらだつ王様の笑顔が、ひきつります。
「なんでって、おいしいでしょう?」
悪びれない娘の言いように、王様はようやく気づきました。
「もしや、『玉ねぎ禁止之事』を知らぬのか」
最初のコメントを投稿しよう!