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「あ。もしかして、あの御触書は、そのようなことが書かれていたのですか」
小娘は部屋の奥へと消えると、御触書を手にして急いで戻ってきました。
「申し訳ございません。字が読めないので、わかりませんでした。
噂話も入ってこない森の奥ゆえ、人づてに知ることもありませんでした」
「そうであったか。では、これからは玉ねぎを食べないように」
不便な森の奥に住み、字も読めない小娘をかわいそうに思った王様は、命令だけして立ち去ろうとしました。
「なぜ、玉ねぎはダメなのですか。とてもおいしいのに」
小娘の問いかけに足を止めた王様は、思わずため息を吐きました。
「なぜって、涙を流すことになるであろう。そのような辛い所業をもたらす悪の野菜は食べないほうがよい」
真剣な顔をして王様がそう言いきると、小娘はくすりと笑いました。
「王様。涙を避けておいしい玉ねぎを食べないのは、もったいないですよ。
今、焼きますので、食べていってくださいな」
小娘はそう言うやいなや、王様を中に招き入れ、台所でなにやら始めました。
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