玉ねぎ禁止之事

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 あるところに幸福な国がありました。  王様は人々の笑顔を見るのが大そう好きで、民が苦しまない政治に励んでおりました。  ある日のこと、王様が厨房のそばを通ると、中からシクシクとすすり泣く声が聞こえてまいりました。 「なにごとか」と、王様が問うてみれば、 「玉ねぎが目にしみる」と、その者は言うのです。 「ならば、玉ねぎをなくしてしまおう」と、王様は即決しました。  それから、その国では玉ねぎが消えていきました。  ただ、村はずれでは食べられ続けられました。  字が読めない人が多く、各家に配られた御触書の内容が伝わらなかったからです。    玉ねぎが禁止されてからしばらくたった日のこと。  王様は狩りをしに、馬にまたがって出かけました。おつきの者と犬も一緒です。  野原に到着すると、みんな一斉に犬を放ち、馬に乗って獲物を追い始めました。  この狩りは、だれがいち早く、愛犬と共に獲物を手に入れられるかを競うであり、王様や従者という身分に関係なくみんな本気で駆け回るのです。  そのうち、王様の犬が森の奥へと入っていき、王様は独り森へと進んでいきました。
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