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屈強なマール人のバトムを引き連れて、ブルームアは艦中央部にある艦橋へ向かった。
はしごのような急勾配の階段を上ると、その場所に着く。踏み入るなり明かりの灯った室内をさっと見回して、異常の有無を確認した。
人の目線の高さにある、左右前方がガラス張りになったコの字型の窓。今は夜の闇しか見えないが、両端にはより遠くが見えるよう、備え付けの望遠鏡もある。中央には羅針儀が置かれ、その少し後方には床から伝声管が突き出ていた。各主要所と繋がっており、相手がその場にいる限りはいつでも連絡が取れる。
この時の艦橋内の当直は、ブルームアの指示により従順な若いゾルギア士官が連絡員として六人配されていた。それだけの人数でも窮屈感のある室内だ。椅子はなく、誰もが立って任務に就いている。
状況が飲み込めていない彼らは驚いてバトムを見続け、一様に胸の内の言葉を顔に浮かべていた。
「ここはマール人の立ち入りは禁止のはずです」と。
ブルームアは艦長として普段通りの口調で告げる。
「本艦の目的は変更された。今後はマール人の指示に従うように。交代は来ない。君たちは二十四時間勤務になるのを覚悟してくれたまえ」
エルドラド号はゾルギア国の最新鋭艦だ。他の艦が鉄製で造られる中、艦殻に特別な合金を混ぜてより強度を増している。艦の全長は百七十メートル、主砲に四十五口径十二インチ砲を五基搭載。他の艦が有効射程距離一万メートルなのに対し、エルドラド号は1万五千メートル。機関は蒸気タービンで最大で二十五ノットの速度が出せ、駆逐艦以上の速さである。
防御力、攻撃力、速力の全てに優れた艦であり、特に防御力に関しては他国を大きく引き離している。敵国はさぞかしは苦戦を強いられるであろうと、ゾルギア軍の誰もが確信していた。それを、艦長以下七十人のマール人と二人のゾルギア人で乗っ取ったのだ。
ゾルギア艦隊を相手に、叛乱を起こすために。
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