黄金劇場の主役 Sentence.1

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黄金劇場の主役 Sentence.1

 芸術の都フェルニンスは、美しいニンス湖の上に築かれた大都市です。浮島のように区画がそれぞれ独立し、無数の橋で繋がっています。その自然と人工の調和から移住者も増え、今や世界遺産に登録されるほどです。  しかし何も自然だけの調和が人気の高い理由ではありません。  フェルニンスを建設したヒュー・クラント氏は自身の著書『自然への挑戦』で、この街に込めた想いが綴られていました。 『ニンス湖の由来である悲しき乙女の為に、彼女が悲しまないような楽しい街にしたい。生前彼女が好きだったとされる芸術をこの街に生み出し、後世にも残すつもりだ』  彼が述べるようにニンス湖には大変悲しいお話があります。その悲劇的なお話は現在もフェルニンスで語り継がれ、『ニンスの悲哀』と言うタイトルで、舞台にもなっています。  今回公演される『ニンスの悲哀』では、今話題の——             ✿ ✿ ✿ ✿  宿で購入した新聞を読みながら、シャルルは溜め息を吐きました。  長い馬車旅の為に、と購入したのだが内容は大した記事はなかったのです。目ぼしい物と言えば特集になっている『フェルニンスに黄金の姫現れる!』だけでした。内容はこれから向かう水上都市フェルニンスの大劇場で行われる公演についてです。
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