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「ひい、ふう、みぃ——」
七人分のチケットが入っています。それも豪華列車の。ですが、そのチケットを持ち、乗り込もうとしているのはまだ大人にもなっていない仔山羊達なのです。
渡した仔山羊の後ろには六人の仔山羊。親らしき山羊はいません。
「駄目だ。駄目だ。子供だけで乗せるわけにはいかない」
「メェ……お母さんが、お母さんが、このチケットを使って、遠くまで逃げなさいって。お母さん…」
大粒の涙を流しながら突然泣き始めてしまいました。
これには周囲に人は何事かと目を向けました。大勢の注目を浴びた駅員さんは流石に通さざるを得なくなりました。
乗れることに大いに喜んだ仔山羊達は改札を通り、ホームに向かいます。
複雑な表情をする駅員さんのところにお嬢様らしき少女と品の欠片もない少女がやってきました。また面倒な仕事が増えたと思いました。
「はい、二人分ですよぉ」
「……はい。確認しました。ごゆるりと優雅な旅をお楽しみください」
さっきの困惑が嘘のように笑みを浮かべ、通しました。
次に来たのはふくよかな肉体をしたマダムでした。着ている赤いドレスははち切れんばかりミチミチです。腹と胸の境界線がなくなるほど大きい身体に駅員さんは苦笑い。
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