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大学の法学部を卒業し法科大学院の法学概習者過程に進んだ櫂は、今年そこを修了する。5月には司法試験を受ける予定だ。
弁護士になる為の最短コースを行くと言った櫂の最初の関門となる。
私にできることは、櫂がその為の勉強をし易い環境を作る事。
何かして欲しい事がないかと聞いても、洸はそこにいてくれれば良いとか言う人だもんね。せめて邪魔にならないようにしなきゃ。
絵を描こうと準備をしていたら、スマホに着信があった。画面に表示されてる名前はうちのお母ちゃんだ。
「もしもし、お母ちゃん?」
『あ、洸?元気だった?』
「うん元気よ、櫂も元気だよ。お母ちゃんもお父さんも変わりない?」
「ええ、こっちはね」
急にどうしたのかな、いつもならメールが多いのに。
「櫂はいるの?」
「今日はゼミのほうのお付き合いでちょっと遅いの」
「そうなの…」
なんだかお母ちゃんの様子が変だ、歯切れが悪いような…私はお母ちゃんの次の言葉を待った。
「あのね洸」
「うん」
「明日、時任弁護士さんから櫂の方には連絡があると思うんだけどね。洸には先に伝えておくわ」
え…なに?
「昨日ね、時任さんの方に櫂の父親から連絡があったの」
櫂の父親って…あの?
「櫂の弟が病気で、櫂に助けて欲しいって事なんだけどね」
なに、それ。どういう事?
櫂の弟って、あの夏の日に仙台の街で会ったあのちっちゃなカイ?あの子が病気なの!?
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