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お母ちゃんから聞いたお話はこうだった。
櫂の腹違いの弟、小杉カイくんが急性骨髄性白血病を発症したのは3ヶ月前の事。
骨髄移植の手術が必要な重篤な状態らしい。急ぎ両親や母親側の親族から骨髄移植の提供者を探したが、どうしても白血球の型が適合する者がいない。
こうしている間にもカイの病気は進行している。カイの父親は本当にどうしようも無くなって櫂に泣きついて来たらしい。
兄弟なら、適合の可能性はかなり高い筈と。
「そんなのって…」
『そうよ、本当に酷い話よ。五つの櫂を捨てた父親がこんな時ばっかり…!私は櫂の母親として本当は二度とあの男に櫂を会わせたくないわ、アルもとても怒ってる』
「……」
『けどね、櫂の弟には罪は無いのよ。時任さんも櫂と話してみるって言ったの、その前に私に連絡をくれたのよ。時任さんもなんでこの大事な時期にって頭を抱えてらっしゃったわ』
洸からは無理に話す必要は無いし、話したかったら話してもいい。どちらにしても櫂は明日には知る事になると。
そしてお母ちゃんとの電話が切れた。
あの小さなカイが病気…しかも大人でも大変な白血病だなんて。
あれからもう6年以上経っているけど、カイはまだ11才位の筈だ。私の櫂の幼い頃に良く似ていた小さな可愛いカイ。
きっと苦しんでいるんだ。それを思うとこんなにも胸が苦しくなる。
私でさえがこんな状態になるのだから、櫂がこの事を知ったら大丈夫なのだろうか。
本当は誰よりも優しい櫂なのに。
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