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そして引越し当日。
ようやく着いた今度のお家は、一軒家だけどかなり古い。でもすごく大きい。
運送屋さんが大きな家具を各部屋に置いて、冷蔵庫など設置してくれたあとはもう自分たちで頑張るしかない。山積みのダンボールにちょっとげっそり。
「これでも大分直したんだと大家が言っていた。とりあえず雨漏りはしないらしい、あとは父ちゃんと昂輝で修理しながら住む」
「おう!」
ワクワクした顔でそう返事をする昂輝だったが、本当に分かっているのだろうか。
いやお父ちゃんも本気だろうか、私と夏那が思わず顔を見合せる。結構大変だと思うけど。
元小さな旅館だったというその家は、大きな台所と食堂の他に小さい部屋がいっぱいだった。
好きに改装していいと言われた櫂が、二階の廊下を挟んで左右にあった四畳半間8室の一部を3室づつ繋げた。と、いっても間にあった重そうな板戸を全部外しただけ。
それぞれそこを女の子部屋と男の子部屋に分けて、残った突き当たりの2部屋は学習室にすると言った。
私と夏那もお掃除で大変だ、引っ越し初日はとにかく寝る場所の確保だけで精一杯だ。
一階の一番大きなお部屋でみんな固まってお布団を敷く。
この部屋だけは入居前に古い畳を全部取り払って真新しいフローリングになっていた。20畳はあるからここはリビングルームだね。
「明日になったら福島のおばあちゃんとおじいちゃんが来てくれるからね、ハルおじちゃんも手伝いに来てくれるって」
「わぁ、本当!?」
昂輝も夏那もおじいちゃんとおばあちゃんが大好きだ。
ハルも同じ大阪だから、たまに奥さんの美波さんとマンションに遊びに来る。明日は引っ越しだからあいらちゃんは来ないのかな?今年3才になるあいらちゃん、金色の髪がキラキラしててまるでお人形みたいに可愛いの。会いたいな。
「夏那、もうしばらく大変だけど頑張ってね」
「大丈夫、すごく楽しいよお母ちゃん」
お布団の中で夏那が笑う。相変わらずとても働き者の夏那だ、本当に助かる。
その向こうで昂輝と櫂はもう爆睡だ。
明日もみんなで頑張ろうね。
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