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「ここまでだな、暗殺者リウ。銃刀法違反および殺人未遂の現行犯で逮捕する」
……逮捕、だあ?
俺は思いきり顔を顰めた。
「はあ?」
「俺はビジネスマンじゃない。警視庁捜査一課の刑事だ」
「へえ、そうかよ、そいつは知らなかったな」
俺は目の前の銃身を片手でぐいと掴むと、そのまま横に押しやった。
「あんたが刑事だったのは5年前。今は落ちぶれた、ただの暗殺者だろうが」
「……ふふっ、知ってたのか、アサシン──いや、エージェント・リウ」
「そいつは過去の話だ」
「ああ、知ってるとも。今のおまえは暴力団の、ただの鉄砲玉だ」
「おまえは雇われ組長だろ」
「雇われ組長として潜入捜査をしている公安の刑事だよ」
「刑事がヤクザに身を落としたか。洗えばいくらでも逮捕状を請求できそうだな」
「おまえの逮捕状を、てことか?」
「残念だったな、ミカヤ、おまえのだよ」
「……鉄砲玉が刑事だというのはガセじゃなかったのか」
「疑ってたのかよ」
「ありがとう、いい記事が書けそうだ」
「悪いが、あんたが記事を寄せてる雑誌は買収させてもらったよ」
「君は鴻ノ池財閥の御曹司だったね。良かった、あの出版社にはさんざん煮え湯を呑まされたんだ」
「家とはとっくに縁を切った。名家ってのは動くのに邪魔だからな、そうだろ? チワワン国第2王子様」
「6年前、クーデターが起きたのをまさか知らないのか?」
「知ってるさ、ただ興味がないだけだ」
……………
………
……
いつしか夜は白々と明けてゆき、俺はすっかり重たくなったまぶたを開けておくのに必死になっていた。
思考力など既になくなっている。
拾った男と拾われた男が二人、互いにぐったりと肩を持たせかけ、自分が知る限りの相手の素性を引き出そうと、静かな死闘を繰り広げている……
「……つまりおまえは、刑事でもヤクザでも記者でもない、ただの第2王子………」
「違う、俺はおまえをずっと……ええと、アレだ、アレ……」
「アレか……」
「アレだ……」
……駄目だ、一旦寝る。
[おわり]
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