ようこそ、霊界へ

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「はい、あなた今日から幽霊ね」  知らない奴から突然そう言われて、納得できる奴がいったいどれだけいるだろうか。少なくとも、俺は固まった。口を開けて、アホ面してたと思う。 「おやおや。目を開けたまま寝ているのでしょうか」  俺の目の前でニコニコ笑ってるおっさんが頓珍漢なことを言う。 「いや、寝てないですよ。でも、いきなりお前は今日から幽霊だって言われたって、面食らうでしょ。第一、あなた誰ですか」 「おやおや。私のことが気になる? 珍しい方ですねえ。みなさん、『ここはどこですか』という質問が先に口をついて出るのに。一番気になるのが私の名前とは、いやいや」  何なんだこいつは。激しく気持ち悪い。なんで俺がおっさんに興味あるみたいな言い方なんだ。……とは思ったものの、言われてみれば、俺がいるのは家でもなければ会社でもない。帰り道にある居酒屋でも、近所のコンビニでもない。  知らない場所だ。しかも、やけに薄暗い。
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