ようこそ、霊界へ

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 しかし待てよ。ここが無くなった人間が集まる場所ってことは……。 「え、じゃ、俺も……?」 「はい。あなたは亡くなっています。ですから、あなたは今日から幽霊ね」  さっきの遠藤の発言を信じかけたが信じたくなくなった。知らぬ死んだ大勢が集まるってだけなら納得できるが、自分が死んだなんて言われたら話が別だ。 「いやいや、待ってくださいよ。俺、元気じゃないですか! 突然知らない場所にいるし、気づいたらあなたが目の前にいるし、確かにこの状況はおかしいけど……あなた死んでますって言われて、はいそうですか、って納得できるわけないでしょう」 「いえいえ。私は『あなた死んでます』なんて申してませんよ。『あなたは亡くなっています』と申し上げました」  揚げ足とってんじゃねえよ。細けえよ。てか、ポイントそこじゃねえよ。 「そうじゃなくて! 自分が死んでるなんて思えないって言ってるんです!」 「なるほどなるほど。あなた、どこまでの記憶をお持ちですか?」 「記憶……?」 「はい。ここに来る前、どこで、何をしていたか、覚えていますか?」  そう言われて、思い返してみる。確か……朝起きて、飯食って、会社行って……、何の仕事してたんだっけな。思い出せないな……。まあいいや。で、仕事終わって、会社出た……その後は……? 「仕事終わって、会社を出たところまではぼんやり覚えてるんだけど……その後が思い出せない」 「ふむふむ。完全ではないにしろ、記憶を持ってきてしまったようですね。納得納得」  いや、勝手に納得されても。俺は何も理解できていないんだが。
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