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俺が煮え切らない表情をしていたせいか、遠藤は最初の貼り付けたような笑顔を向けて説明を始めた。
「失礼失礼。順を追ってお話しましょう。まず、ここは霊界。亡くなった人がやってくる場所です。これは先ほどお話しましたね。そして、ここにいるということは、あなたも例に違わず、死人であるということです」
俺が死人、の部分が納得できない……というより、受け入れられないといったほうが正解なのだろうが、言葉が胸につかえたような気持ちになるが、口を挟まず耳を傾ける。
「亡くなった方にもいろいろおられまして、多くはあなたが見た方々のように、記憶を失ってただ向かうべきところに向かうだけです。しかし、中には生前の記憶を持ったまま霊界にやってくる方もおられます。あなたのようにね」
俺に両手を向けて、遠藤は続ける。
「ただ、持っている記憶の量にもバラツキがあって、二割程度しか覚えていない人もいれば、完全に覚えている人もいる。なぜかは分かりませんが。あなたの場合、完全ではないものの、記憶をお持ちになってここを訪れた、というところですね」
遠藤は、説明終わり、という感じで両手を下ろした。納得はできないが、理解はした。少なくとも、遠藤が嘘を言っているようには思えなかった。俺にこんな嘘をつく理由もない。しゃがみこんで頭を抱えてしまったが、なんとか自分を落ち着かせた。
「分かった……。いや、分かりたくないというか、全部理解したわけではないけど、分かった」
「どっちですか」
「うるせえな! 突然死んだって言われたって、理解はできてもそんなすぐに納得はできねーんだよ!」
「突然大声を出して、情緒不安定な方ですねえ」
「誰のせいだよ!」
悩むに悩めないこの状況なんなんだ。死んだ実感が沸かないのって、こいつのせいってのもあるんじゃないか……?
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