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「……で? 俺はこれからどうすればいいんだ?」
俺は立ち上がって、遠藤に尋ねた。
「死んだ奴らは、どこかに行かないといけないんだろ? あいつらみたいにさ」
俺の背後を指さして言った。チラッとみると、わりとすぐそばまで迫ってきてて、ちょっとビビったのは内緒。遠藤は驚いた顔をして顔を近づけてきた。
「もう行き先を決めておられるので?」
頼むから離れてくれ。てか質問に質問で返してきやがったよ、このおっさん。
「はあ? 決めるも何も、さっきあんたが言ったんだろ? 『向かうべきところに向かう』って」
遠藤は納得した顔をして何度もうなずいた。表情変化の激しいやつだな。
「なるほどなるほど。いや、言葉足らずで失礼しました。確かに、彼らは『審判の門』と呼ばれる場所へ向かっております。と言いますか、それしかできないのです。記憶がないわけですから、自分が誰かも分からない。もしかすると、言葉も分からない。自我すらないかもしれない。そんな彼らができるのは、『審判の門』の管理者に導かれるがままに、門へと向かうことだけなのです」
『審判の門』? あれか、天国行きか地獄行きか決めるってことか?
「俺はそこに行かなくていいわけ?」
「行きたいのなら止めはしませんが。あなたは、彼らと違って記憶がある。意思がある。それなら、しばしこの霊界を楽しんでいかれるのもよろしいかと思うんですがねえ」
楽しむって……この薄暗い空間で何を楽しめというんだ。選択肢なんて、あってないようなもんじゃないか。遅かれ早かれ『審判の門』に行くってことだろ。だったら、面倒なことしてないで、とっとと向かったらいいじゃないか。あ、でも俺、天国行けんのかな? 地獄だったらやだな……。針山歩かされたりすんだろ……。
「ちなみに、霊界に留まれば、制限はあるものの、現世に降りることも可能ですよ」
遠藤の言葉に、妄想で針山を散歩していた俺の頭が一気に現実に戻ってきた。いや、霊界に戻ってきた、が正しいのか? いや、そんなことはどうでもいい。
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