求職活動 IN 霊界

2/12
前へ
/234ページ
次へ
「ところで、あなたお名前は何とおっしゃるんですか?」 「はあ!? あんた、俺の名前知らなかったわけ!?」 「当然じゃないですか。私たち、初対面ですよ?」  遠藤が今更過ぎる話題を振ってきやがった。確かに俺はまだ名乗ってなかったけど、霊界のイメージ的に、言わずとも俺の情報なんて知ってるんだと思うじゃん。閻魔様の審判を受けるのに、いちいち自己紹介するシーンなんて、小説やドラマで見たことないし。  まあ、遠藤の方は名乗ったわけだし、そこで名乗らなかった俺も礼儀は欠いてたか……。 「磐田一成(いわた かずなり)」 「磐田さん。改めて、よろしくお願いしますね」  そう言って、遠藤が手を差し出してきた。 「ああ、どうも……」  俺も手を差し出し、握手を交わした。お互いに体温を感じられない。その不思議な感触に、俺は自分が死んでいるんだと改めて思い知らされた。 「早速ですが、磐田さんには求職活動をしていただきます。そうでないと、『審判の門』に強制連行されてしまいますからね。私が磐田さんのお仕事探しを精一杯サポートしますので、ご安心を」  はあ……。死んですぐ仕事探しとはな。さながら、おっさんが転職エージェントってとこなのか? 生きてた頃に転職活動したことはあるけど、履歴書だの職務経歴書だの作らないといけなくて、結構面倒だったんだよな。 「では、求人票をいくつかお持ちしますので、少々お待ちいただけますか。いったん失礼」  それだけ言うと、遠藤は宙に浮いて飛んで行った。 「マジかよ!?」  そういう立ち去り方なの!? あいつ人間か!?
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加