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「ところで、あなたお名前は何とおっしゃるんですか?」
「はあ!? あんた、俺の名前知らなかったわけ!?」
「当然じゃないですか。私たち、初対面ですよ?」
遠藤が今更過ぎる話題を振ってきやがった。確かに俺はまだ名乗ってなかったけど、霊界のイメージ的に、言わずとも俺の情報なんて知ってるんだと思うじゃん。閻魔様の審判を受けるのに、いちいち自己紹介するシーンなんて、小説やドラマで見たことないし。
まあ、遠藤の方は名乗ったわけだし、そこで名乗らなかった俺も礼儀は欠いてたか……。
「磐田一成」
「磐田さん。改めて、よろしくお願いしますね」
そう言って、遠藤が手を差し出してきた。
「ああ、どうも……」
俺も手を差し出し、握手を交わした。お互いに体温を感じられない。その不思議な感触に、俺は自分が死んでいるんだと改めて思い知らされた。
「早速ですが、磐田さんには求職活動をしていただきます。そうでないと、『審判の門』に強制連行されてしまいますからね。私が磐田さんのお仕事探しを精一杯サポートしますので、ご安心を」
はあ……。死んですぐ仕事探しとはな。さながら、おっさんが転職エージェントってとこなのか? 生きてた頃に転職活動したことはあるけど、履歴書だの職務経歴書だの作らないといけなくて、結構面倒だったんだよな。
「では、求人票をいくつかお持ちしますので、少々お待ちいただけますか。いったん失礼」
それだけ言うと、遠藤は宙に浮いて飛んで行った。
「マジかよ!?」
そういう立ち去り方なの!? あいつ人間か!?
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