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「お兄ちゃん、焼きそばふたつください!」
「はいよー、600円な」
「ありがと、っ」
「いってぇな!なにすんだよ!!」
マジ、こいつ、どうにかして……。
カミサマ、あなたは何故コイツに怒りという感情を与えてしまったんでしょうか。
「ふぇ……」
チビいるのに大声出すのはホント馬鹿。周りも後先も考えないで、一人で突っ走る。走るなら一人でやって。衝撃波がすごいのよ。メ〇スなの?
胸倉に伸びてくるヤツの手を叩き落して、屋台から出ると、チビがちっこい手に焼きそば抱えて、泣く寸前みたいにプルプルしてる。
頼むから、そのままでいてくれ。俺が泣かせたみたいな絵面だけはホントに、やめて。お願い。
「悪かったな。あのバカ野郎は俺が締めとくから。早くママんとこに、ガッ!!?」
「田中ぁあああああ!!」
あー、もう3秒も黙ってられねぇのか。怒鳴りてぇのはこっちだっての!くっそ、いてぇ……。血の味がします。おいしくない。
まぁ、チビはウサギのように走り去ったので良しとして。
「離せよ」
こんな公衆の面前で胸倉つかむとかありえないです。ヤンキー映画じゃないんだから。本当ならカッコよく引きはがしたいところだけど、なんせ相手は握力ゴリラ。断じて俺が弱いとかではなく。
「なんなんだよお前は!!」
「っるせぇな、そりゃこっちのセリフだ」
なんで嫌いな奴の顔を、こんな至近距離で見なきゃならんのですか。そんな癇に障るようなことした覚えないんですけど、俺。
にらみ合ってると、周りに人が集まってきた。まぁ、この状態ならそうなるわな。
「こンのっ!!」
「ちょ、バカっ!」
もう一回くらいそうになったのを渾身の瞬発力で躱して、バランス崩した鈴木を神社裏の空き地に引っ張った。
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