『夏祭り』

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 8月の半分が終わって、今日は町内の夏祭り。  神社の境内は、普段の静けさが嘘のように賑わっていた。所狭しと並ぶ屋台と、提灯の明かりがまぶしい。普段のジジババ率とは打って変わって、ちっこいのがそこらじゅうを走り回っている。 町内会でやるやきそばの屋台は、毎年持ち回りで店番をする。今年は、俺の母親と鈴木の母ちゃんが担当。 とはいえ、駆り出されるのは俺らなわけで。汗だくになりながら焼きそば焼いて接客する俺らをよそに、いつの間にか浴衣に着替えた二人は連れ立ってどっか行きました。  いや、良いんですけどね。お母さま方にも楽しむ権利はあるんですよ。 「おい!そこちゃんと混ぜろよ。焦げてんぞ」 えぇもうホントにこいつさえ居なければいくらでも。 「なに黙ってんだよ」 なにやめて、ヤンキー怖いんだけど。 こいつ、超怖々ヤンキーこと鈴木。俺の宿敵です。ライバルとかじゃなくて、なんていうか、ほんとに合わない。正反対。  高校からの同級生だけど、クラスメイト止まり。共通点といえば、担任に目をつけられてることくらい。 ……嬉しくねぇ。 元々近付かないようにしてたのが、最近色々あって、やたら絡まれるようになっている。面倒だから、視界に入らないよう努力していたと言うのに。 母親の言いつけで、店番を一緒にするどころか、そろいの浴衣でトドメを刺された。お遊戯会じゃないんですよ……。 なにが「知ってる子がもう一人いるからダイジョーブ!」だ。俺らはこんなに険悪なのに、なんであの人ら仲良しなんだ。わけわからん。 「っるせぇな、文句あんならてめぇでやれ!」 熱い鉄板の前で、男二人が横並び。狭い熱いうっとおしいの三拍子で、今の俺のイライラ度、MAX。 加えて、さっきからことあるごとに文句言ってくる鈴木がムカついて、寄ってくんなという思いを込めて、その(すね)を蹴り付けた。 俺も魔が差したんですよ。だってムカつくんだもん。バカでアホなこいつが、喧嘩してる時だけなんかちょっとだけカッコいいことに気付いてしまって、悔しい。全然相手にしてなかったヤツから、突然100点のテスト自慢されたみたいな。 あと、俺より背が高い。ちょびっとだけ。ちょびっとだけ!! そんなこんなで、売られた喧嘩を0.1秒で競り落とす、このヤンキーの反射神経舐めてました。
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