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まりあの教室には一分もかからずに着いた。
空いたドアから中を覗き込む。
いた。
窓際、1番後ろの席。
まりあは弁当も開けずに一人でぼんやりと座っている。
他の女子はみんなそれぞれ机をつなげて、友達と昼食を取っているのに。
そうか、まりあも一緒だったんだ。
いつも一人きりで、やんわりと存在を拒否される孤独感に耐えながら過ごして。
再び突き放される恐怖に、クラスメイトに声をかける意志すら削がれて。
だから、僕の所に……
まりあの席へと歩み寄る。
下級生達の不思議そうな目線も、今だけは気にならない。
気にしない。
「まりあ」
まりあの細い手をしっかりつかんで、僕はゆっくりと言った。
「一緒にお弁当、食べよう?」
大きな目が僕をの目を捉える。
その表情は、少しだけ嬉しそうに見えた。
『せんぱいが、いいなら』
静かに静かに差し出された手には、ちゃっかりお弁当が二人分あった。
『ランチ、食べましょ?』
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