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初めての出会い
初めて彼女と出会った時のことを思い出す。
ロマンチックな出会いでもなく、感動的でもなく、普通の出会いではなかった。
小学校5年生の僕は湯船に浸かって黄昏ながら仰向けでお風呂場の天井を眺めていた。
何も考えていなかったが、ふと疑問に思うことがあった。
お風呂場の天井の四角いフタってどうゆう意味があるのだろうか、そんなどうでもいい事を思ったが数秒で目を離して、浴槽を見てから天井から妙な音が鳴った。
ジャララらららららら・・・・・
お風呂の天上のフタと繋がっていると思われるチェーンが突然垂れ下がってきた。
バカな僕は、その時の不自然さに気がつかずに頭の上にハテナマークを付けて首を傾げて気にもしなかった。
フタがずれていて、たまたまチェーンが垂れてきただけだと思った。
頭を洗い、身体を洗い再び湯船に入り直した。
これは、どうでもいいかも知れないが、身体を洗ってから湯船に入る派と先に湯船に入ってから身体を洗う派かは意外と分かれる。友達とこの話をして凄く怒られたと言うエピソードを思い出しながら「どっちだっていいだろ」と独り言を呟きながら今さっき垂れたチェーンを眺めた。
湯船に浸かっているのに、悪寒がした、視線を感じ急に鳥肌が立つ。
お風呂場で視線を感じる事は不思議で、家族だったらすぐに分かる、お風呂場の扉は、スモークの様な扉で、誰かがいるなら薄っすら見えるはずだから。
その視線がさっきチェーンが垂れさがったフタからだったからだ。
目を凝らしてフタと垂れ下がっていたチェーンの隙間を眺める。
お風呂場の天井に人が入れるとはそう思えない、だが僕の目とお風呂場のフタの僅かな隙間から覗く目と合ってしまった。
僕は驚き「わぁ!」と声を上げてしまった。
お風呂場の小さな空間で、逃げ場もなくただただ驚いていた僕は硬直した。
数秒か数十秒間その目は、消えることもなくただじっと瞬きもせず僕のことを眺めていた。
どうしようかと思った時に、垂れさ下がっていたチェーンが音を揺れて、ズレていたお風呂のフタがゆっくりと締まった。
チェーンは垂れたままで、フタは締まっている。僕は目があった時に長い髪の毛が少し見えた。あれは人で見間違いではない。
これを誰かに伝えても信じてくれる人はいないと思うのは分かっていた、だから今あった事は忘れて何もなかった様にお風呂場を出ようと浴槽から片足を出した時僕の背中何かがこびり付いているのが分かった。
背中に手を伸ばして、その何かこびり付いている物を掴み認識した。
すごい量の髪の毛が背中についていた・・・・。
それが彼女との出会いだった。
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