第一幕「可笑しな戦国時代」

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外へ出ると、回りは古い建物ばかりで、歩く人は着物を着た人しかいない。 やっぱり、戦国時代なんだ……。 この光景を見ると、刻が言っていた言葉は本当なんだと実感する。 確か建物を出て右だったはず。 教えてもらった通りの道を進んでいくが、周りの人達から視線が向けられているのを感じる。 何で私見られてるんだろう……。 暫く顔を伏せて早足で歩くと、いつのまにか村を抜けたらしく、周りに人はいなくなっていた。 すぐ目の前にはすでに城が見えてきており、もうじき着くと感じたと同時に、ここからどうすればいいのか考えていなかったことに気づき足を止めた。 ここまで来たはいいものの、これからどうしようかと考えていると、どこからか沢山の蹄の音が聞こえてくる。 後ろから聞こえてくる音に振り返ると、馬に乗った人達がこちらへと向かってくるのが見える。 沢山の人を引き連れ、その先頭を歩く馬の背には、鎧に兜をつけた男性の姿があった。 その人は、私の近くまで来ると馬の背から下り、私の目の前に立つ。 「貴様、そこで何をしている」 「え、えっと……」 まさか、信長様に愛を教えに来ました。 なんて言えるわけもなく、口をつぐんだまま何も答えることができない。 「貴様、奇妙な着物を着ているな」 私が考えを巡らせていると、男性が先に口を開いた。 言われるまで気付かなかったが、服装は現代のままだったことに今頃気付いた。 村の人達が私を見ていた理由は間違いなくこれだと納得していると、その男性の後ろから、もう一人の男性がこちらへと歩み寄り、一度私を睨むようにして見ると、男性へと向き直った。 「信長様、何ですかその女は」 「知らぬ」 突然現れたこの男性は今、確かに私の目の前に立つ男性を信長様と言った。 もしかして、もしかしなくてもこの人が織田信長だと確信したその時、私の目の前にもう一人の男性が立ち、刀の鞘へと手をかける。
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