62人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
「花咲」
「あ、三成さん!」
私が一人縁側で考えていると、三成さんが廊下を歩いてきた。
「こんなところで何をしてるんだ?」
「考え事をしていたんですけど、どうするか決まったので!」
「そうか。何かあったらいつでも俺に相談してくれ」
「ありがとうございます!」
三成さんって書物を沢山読んでいるから色々なことを知ってるだろうし、そう言ってもらえると心強さを感じる。
「違うな、俺に相談してほしいんだ、他の誰でもない俺だけに」
「三成さん……?」
何だかいつもより真剣な顔をしているけどどうしたんだろう……?
「俺は、今まで自分の体のことなど考えたことはなかった。俺の体のことなど気にする奴もいなかったからな、だが、あんただけは違った」
あのときの三成さんは、怪我人の手当てに、薬に使えそうな薬草を調べるために書物を読んだりと全く休むことをしていなかった。
だから私はそんな三成さんのことが心配で休憩もとってもらうように伝えた。
「あのときあんたに心配されたとき、嬉しさを感じた。そしてそのあとあんたが熱を出して倒れたとき、俺は心配でしかたがなかった」
それは、三成さんが人を想う愛が生まれた瞬間だったんだ。
三成さんにも愛が……!
「色々と書物を調べた結果、俺はこの気持ちがなんなのか理解した。これは人を想う愛と、恋なのだと」
「恋?」
「ああ。人を想う愛も、俺の心に確かに芽生えた。だが、花咲を想う気持ちはそれ以上だ」
「っ……!」
三成さんからの真っ直ぐな告白に言葉を失っていると、今自分の言った言葉に恥ずかしくなったのか、三成さんの頬が薄く色づいていくのがわかる。
「想いを伝えたら返事を待てと書物に記されていた。返事はいつでも構わない、それではこれで失礼する」
三成さんは私に背を向けるとその場から立ち去ってしまった。
頭を冷やすはずが更に熱くなってしまい、自分が今どんな状況なのかもわからなくなっていた。
散歩でもして一旦気持ちと頭をリフレッシュさせようと、私は庭を散歩することにした。
心地いい風に吹かれながら歩いていると、何だかさっきまで高鳴っていた胸は落ち着いてきたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!