第十幕「いざ、甲斐へ!」

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第十幕「いざ、甲斐へ!」

そして翌日、私は秀吉さんと甲斐へ向かった。 出発する前に皆が見送ってくれて、何だか心がポカポカと暖かくなるのを感じていた。 秀吉さんの馬に揺られ、早朝に出たというのに甲斐へ着いた時には日が暮れていた。 秀吉さんが馬を飛ばしてくれたお陰で、これでも予定より早くついたらしい。 「俺はここまでだ、お前一人で本当に大丈夫なのか?」 「秀吉さんは心配性ですね」 クスッと笑ったとき、私は秀吉さんの腕の中へと閉じ込められた。 「無事に帰ってきてお前の返事を聞かせてくれ」 「はい」 私も答えるように、秀吉さんの背中に腕を回し抱き締める。 私は皆に告白の返事をしなければいけない、ちゃんと無事で帰るから、そんなに辛そうな声を出さないでくださいと心で呟いた。 秀吉さんが行ってしまったあと、私は大きく深呼吸をすると城へと入った。 「お待ちしておりましたよ」 「あ、貴方は……!」 城の庭へと入ると、そこには、この前の戦の時にお会いした真田幸村がいた。 「戦では御館様の御命を助けていただきありがとうございました。城で皆様御待ちなので広間まで御案内します」 あの時は話せなかったからわからなかったけど、真田幸村って人何だかいい人みたい。 私は幸村さんの後ろを着いていくと、広間へと案内され中へと入った。 「待っておったぞ!」 「この子が信玄を助けた女人だね」 「信玄殿を助けたと聞いたのでどんな女子かと思いましたが、普通の女子に見えますな」 信玄さんと他に二人男性がいるけど、何だか三人の視線が私へと注がれて足を引いてしまいそうになる。 「では御館様の前へとお座りください」 「はい」 幸村さんに促され、私は信玄さんの前へと座った。 「尾張から来ました、花咲 千流良です」 「戦以来だな。まさか信長の女に助けられるとは思わなかったぞ」 「私は信長様の女などでは……!」 「何だ違ったのか、まぁよい。女、貴様はどのような理由で此処へ来た」 普通に答えれば同盟を結んでもらうためだけど、理由はそれだけじゃない。 「皆さんに愛を知ってもらうためです」 その瞬間、その場にいた私以外の武将は驚いた顔をすると、信玄さんと謙信さんが一斉に笑い出した。
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