66人が本棚に入れています
本棚に追加
第十幕「いざ、甲斐へ!」
そして翌日、私は秀吉さんと甲斐へ向かった。
出発する前に皆が見送ってくれて、何だか心がポカポカと暖かくなるのを感じていた。
秀吉さんの馬に揺られ、早朝に出たというのに甲斐へ着いた時には日が暮れていた。
秀吉さんが馬を飛ばしてくれたお陰で、これでも予定より早くついたらしい。
「俺はここまでだ、お前一人で本当に大丈夫なのか?」
「秀吉さんは心配性ですね」
クスッと笑ったとき、私は秀吉さんの腕の中へと閉じ込められた。
「無事に帰ってきてお前の返事を聞かせてくれ」
「はい」
私も答えるように、秀吉さんの背中に腕を回し抱き締める。
私は皆に告白の返事をしなければいけない、ちゃんと無事で帰るから、そんなに辛そうな声を出さないでくださいと心で呟いた。
秀吉さんが行ってしまったあと、私は大きく深呼吸をすると城へと入った。
「お待ちしておりましたよ」
「あ、貴方は……!」
城の庭へと入ると、そこには、この前の戦の時にお会いした真田幸村がいた。
「戦では御館様の御命を助けていただきありがとうございました。城で皆様御待ちなので広間まで御案内します」
あの時は話せなかったからわからなかったけど、真田幸村って人何だかいい人みたい。
私は幸村さんの後ろを着いていくと、広間へと案内され中へと入った。
「待っておったぞ!」
「この子が信玄を助けた女人だね」
「信玄殿を助けたと聞いたのでどんな女子かと思いましたが、普通の女子に見えますな」
信玄さんと他に二人男性がいるけど、何だか三人の視線が私へと注がれて足を引いてしまいそうになる。
「では御館様の前へとお座りください」
「はい」
幸村さんに促され、私は信玄さんの前へと座った。
「尾張から来ました、花咲 千流良です」
「戦以来だな。まさか信長の女に助けられるとは思わなかったぞ」
「私は信長様の女などでは……!」
「何だ違ったのか、まぁよい。女、貴様はどのような理由で此処へ来た」
普通に答えれば同盟を結んでもらうためだけど、理由はそれだけじゃない。
「皆さんに愛を知ってもらうためです」
その瞬間、その場にいた私以外の武将は驚いた顔をすると、信玄さんと謙信さんが一斉に笑い出した。
最初のコメントを投稿しよう!