第十幕「いざ、甲斐へ!」

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「かっかっかっ!!愛など、そんなもの武将には必要のないものだ」 「ククッ、愛なんて、武将の僕らには必要のないものだよ。お嬢さんは可笑しなことを言うね」 なんだろうこの違和感、信長様達とは何かが違う……。 この瞬間、私は二人に違和感を覚えた、でもその違和感が何なのかがわからない。 「貴様には命の礼があるんでな、書状に書いた通り好きなだけ滞在して構わぬ。だが、愛などというくだらんものを理解する日など二度とないだろうがな」 信玄さんの瞳の奥に、冷たさ以外に悲しみを感じた気がした。 何故この人がこんなにも悲しい瞳をしているのか、今の私にはわからない。 「幸村、客人を部屋へ案内してくれ」 「御意。では千流良様、部屋へと御案内致しますので着いてきていただけますか」 「はい、お願いします」 私は広間を後にし、部屋へと案内された。 幸村さんってとても言葉が丁寧で優しそうな人だけど、この人にも愛がないのだろうか……? 「ここが千流良様のお部屋になります」 「ありがとうございます。あの、様なんて付けずに名前で読んでいただけませんか?」 「っ……!貴女は御館様の命を救ってくださったお方であり、今は甲斐の客人で、名前で呼ぶなど……!」 いきなり先程までの冷静さがなくなり、おどおどと落ち着かない様子だ。 やっぱり、名前で呼んでほしいなんていきなり言っても駄目だったのかもしれない。 でも、何だか様ってつけられると、間に壁を作られた気がしてしてしまう。 「私は幸村さんと仲良くなりたいんです!それでも駄目でしょうか……?」 「わ、私と仲良く!?わ、わかりました、では、千流良も私のことを幸村とお呼びください」 「はい!幸村」 「っ、愛らしい……はっ!!わ、私はこれで失礼致します!!」 何かを小さな声で呟いたみたいだけど私には届かず、突然幸村は頬を赤く染め去ろうとしたため、つい私はその背中に声をかけていた。
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