第一幕「可笑しな戦国時代」

1/16
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ

第一幕「可笑しな戦国時代」

「ここ、何処……?」 目が覚めると、見たこともない部屋に私はいた。 「目が覚めたみたいだね」 突然声が聞こえ視線を向けると、壁に背を預け立っている、一人の青年の姿があった。 「君には、今から大事なことを説明させてもらうね。まず、ここは君のいた世界じゃない」 「何言ってるんですか…?」 この人が言っていることが理解できず首を傾げていると、続けて青年は話し出した。 「僕の名は(とき)、神の命でここにいる。少し手違いがあってね、存在してはいけない世界ができてしまったんだ。君は、パラレルワールドって知ってるかい?」 「ええ、知ってるけど……」 刻と言う青年は、私にこの世界のことを説明してくれた。 突然聞かされた話に、自分の状況がわからないながらも私は話を理解する。 話をまとめると、この世界は無数にある戦国時代のパラレルワールドの1つで、この世界だけに異常が起きている。 この世界での武将は愛を知らず、民や国のことを考えず戦ばかりを繰り返しており、このままでは、戦国時代で全ての生き物が死に、その先の未来はなくなる。 もしそんなことになったら、それは他のパラレルにも影響を及ぼし、全てのパラレルで同じことがおき、戦国時代から先の未来がなくなると言うことになるらしいのだが。 「何よそれ……何かのアニメの話ですよね?」 「信じられないのも無理はないけど、現実だよ。君をこの世界に連れて来たのは、武将達に愛を教えてほしいからなんだ」 「私が、武将達に愛を……?」 「この建物を出て、右に真っ直ぐ歩いていくと信長の城が見える。その先は君次第だ、未来のために頑張ってほしい」 「え、ちょっと!!」 それだけ言うと、刻の姿は消えてしまい、残された私はしばらくその場から動けずにいた。 パラレルワールド、愛を知らない武将達。 話に現実味がなくて、今この状況が夢なのではないかとさせ思えてしまう。 だが、じっとしていても仕方がないため、刻の言っていた通り一度外に出て、教えてもらった場所へ向かおうと立ち上がる。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!