とある狐守の滑稽な日常

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 唐突に。  探し物が、見つかった。  今日は珍しく水筒の中で大人しくしていると思っていたら、いつの間にか逃げ出していたあいつが。  バイトに遅刻寸前という俺の切羽詰まった状況など露知らず、今の今まで呑気に遊び歩いていた、フリーダムでマイペースなオコジョのような茶色いキツネが。  ――在里の肩の上に、ちょこんと乗っていた。  「キュー!!」 「ブラッキュ?」 「きゅ?」  俺の叫びを浴びた在里とキツネが、同じタイミングで、同じ角度で首を傾げる。いや、仲良しかお前ら。  なんでよりによってそんなところに、と思わなくもないが、目的のものが見つかったことで、とりあえずは安堵の息を吐く。あとは、気まぐれなキツネが、またどこかに逃げてしまう前に、とっとと捕まえればいい。   「はは、そんなに驚かなくても。ブラックにだって、いいところはあっただろ? それにしても本当に詳しいな、筒井」  キツネが見えていない在里は、どうやらまだヤイバーマンの話を続けるつもりでいるらしいが、俺はもうお前の肩に乗っているキツネのキューちゃんを捕獲することしか考えてないんだ。悪いな。 「ちょっとそのまま動くなよ、在里。ついでに目を閉じて耳を塞いでいてくれれば、尚いい」 「え、よくわからないけどわかった」  わかるのかよ。素直なのか、それとも考えが足りないのか。どちらにせよ、何の疑問も抱かず俺の言われるがまま行動する在里のことが色々と心配になるが、今はキツネもどきのオコジョを回収するのが先だ。いや、オコジョもどきのキツネだったか。どっちでも大して変わらない。  わざわざ迎えに来てやってるというのに、キューちゃんは在里に興味津々のようで、徐々に距離を詰めていく俺に対しても、まったく注意を払わない。あまつさえ、在里の顔を正面から堂々と覗き込んだり、頬のあたりに頭をこすりつけはじめる。 「おいやめろ、スリスリすんな。さっさとこっちに来い」 「きゅ! きゅ!」  すっかりその場所が気に入ったのか、普段から俺の言うことなど全く聞かないキツネは、ここでも断固拒否の姿勢を見せた。イヤイヤするように頭を振って、在里の首の裏側へと回り込み、完全に視界から消えてしまう。  苛立ちながら腕時計に目をやれば、いよいよ時間がない。こうなったら力づくで引きはがそうと、大きく足を踏み出して腕を伸ばした、そのとき――。
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