孤立

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「・・・ぅっ・・・っ、ゔっ」 手の甲を唇に押し当てて 必死で声を我慢する 声が漏れることなんてないのに 直ぐ側に兄が居る気がして ポロポロと溢れる涙も しゃくり上げる喉も 堪えた 。 どのくらい玄関に座り込んでいたのか フラつく身体を起こすと 壁伝いにゆっくり歩いた キッチンの引き出しからゴミ袋を取り出すと着ていた服を脱いで入れる 移り香なのか 微かに臭うあの女の臭いが 感情を揺らして身体が震える 下着姿でゴミ袋をバルコニーに放り出すとシャワーを浴びた 兄のルーツも 大澤紅太とのキスも 兄と女のツーショットも 兄とのサヨナラも ・・・全部流れて仕舞えばいい 恐ろしく腫れた瞼に アイシングを当てながら 仕事部屋のベッドに寝転んだ 「とりあえず」 携帯の電源を入れて 震え続ける受信が終わると 父に電話をかけた 「もしもし」 (どうした、愛) 「お願いしたいことがあるの」 (手伝えることはないと思うが) 「仕事じゃないから大丈夫」 「そうか」 依頼を済ませると 眠気が襲ってきた 「このまま目が覚めなければいい」 小さく呟いて目を閉じた
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