孤立

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「愛」 「もういい、帰って」 「愛」 「もう此処へは来ないで」 「愛」 「臭いから早く出てってよ!」 ずっと鼻についていた知らない匂いに 吐き気がする 「他の女の臭いをつけてここまで来るなんて最低っ」 シーツを頭から被って 視界を遮断する 哀しげな兄の顔に 心臓が鷲掴みにされたみたいに苦しい 一夜限りの相手しかいない兄にとっての呪縛は私だとずっと思ってきた 田嶋の闇を継がない(いましめ)を 死ぬまでかけ続ける私からの枷だと ずっと兄を私に縛り付けておくのだと思ってきた それなのに 兄は・・・ ・・・・・・私の兄じゃなかった もう・・・ 解放してあげなければいけない 頭では納得しているつもりが 兄を見るだけで決心が揺らぐ もう我儘を言ってはいけない 怠い身体を起こすと 兄が背中を支えようとするのを止めた 「見送ってあげる」 せめて笑顔で送ってあげよう 枷を外して楽になる兄へ 今の私が出来ること・・・ 寝室のドアを開いて 「さぁ」と促すと 「俺の話は聞いてくれないのか?」 ベッドの脇に座ったままの兄が呟く 「もういい、ごめん一平 今日は帰ってこれ以上顔見れない」 泣き出しそうな感情を殺しながら 必死で笑顔を向ける そんな違和感を感じ取ったのか 「なにかあったら連絡するんだぞ」 頭を撫でようと伸ばした手をギュッと握って引っ込めて 促されるままに玄関を出た 「じゃあ」と振り返った兄に 「さよなら」と呟いて扉を閉めた ・・・これでいい 鍵を全部かけると 脚から崩れ落ちた
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