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思慕(side一平)
side 田嶋一平
碧斗の襲名披露パーティーが無事に終わり
見送りの前にそれは起こった
お手洗いへ立った愛に付き添うつもりが
「どこまで過保護?」
と睨まれて渋々諦めることにした
少し酒が入って薄っすら色付く頬に潤んだ目で睨まれても煽られているとしか思えない
会場を出て行く愛を目で追っていると
「本当余裕ねぇな」
隣に座る碧斗が堪え切れない風に笑う
「あぁ、ねぇな」
愛相手に余裕を見せられる男なんて居るだろうか?
「準備が整いました」
碧斗と俺の間に跪いた桧垣
そういえば桧垣も愛に沈められてたなと到着した時のことを思い出した
見送りの金屏風の前に誘導されると
長い廊下を歩いてくる愛が見えた
ここで駆け寄ったらまた機嫌を損ねる
怒った愛を想像しながら頬を緩めた
金屏風前まで来た愛の様子がおかしい
「愛、大丈夫か?」
声をかける碧斗を見上げているのに
その瞳には何も映していない
「どうした」
なおも声をかける碧斗を見上げる愛から色が抜けた
「愛!どうした・・・一平っ!」
膝から崩れ落ちる愛を支えながら
振り返る碧斗
「愛っ!・・・何があった!」
愛を抱えながら声をかけるのに
力を失ったように動かない愛
「碧斗、見送りは良いから愛を連れて帰れ」
愛を抱えてエレベーターに乗って扉が閉まる前に
廊下を歩く龍神会会長の姐さんと古参の組の未亡人が見えた
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