思慕(side一平)

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繁華街の事務所へ出向くと 奥の部屋に碧斗が一人で頭を抱えていた 可愛い姫が連日泣いていると 渋い顔をしてみせる 「余裕ねぇな」 いつかの碧斗のセリフをそのまま返したのに 余程堪えているのか 「あぁ」 自信なさげな返事が返ってきた 「どうして良いのかわかんねぇ」 固く握った拳をギリギリと太腿に押し付ける様子を見て 俺と一緒だなと思った 陽菜ちゃんの感情が揺らいでいるということは 状況が好転してるということ そんな話をしながら あてがわれる女を断る提案をした 「今夜の女は断れねぇ・・・悪い一平頼むわ」 切羽詰まった顔をされると 断ることは出来ない立場 「あぁ」 と頷いたものの この時の俺は 愛がマンションから帰ったことも その後一人で出かけたことも なにも気づいていなかった・・・ 碧斗と別れて車に乗って初めて 颯からの着信に驚いた 「どうした」 (一平さんすみません、愛が) 「愛がどうした」 (一人で出かけてしまって) 「は?」 俺のマンションにいたはずの愛 何故だ!・・・ 颯から聞かされたのは 戻ってきた愛は一人で部屋へ籠もった後で バトラーを振り切って出かけたらしい (愛の居場所が分からなくて) 焦る颯を宥めながらも 愛を辿る術を知らない俺は 車を動かせずにいた 「・・・愛」 どこへ行った
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