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碧斗の決意を聞いて
それならと覚悟を決めた
「愛は見つかったか?」
「いや、まだだ」
「桧垣も動かしたから、今はアレを連れて歩くことだけ考えてくれ」
すまないと頭を下げた碧斗に
合わせるように頭を下げた
「じゃあ行ってくる」
重い気分をそのままに
女の待つ部屋のドアを開けると
「いつまで待たせるの」
勘違いのクソ女の腕を引いた
洋服を香水漬けにしたのか
女の全身から立ち上がる臭いに
頭が痛くなる
不機嫌さを纏った俺のことなど
眼中にない様子の女は
繁華街を歩きながら
直ぐに出来た人集りを喜んだ
・・・馬鹿じゃないのか
愛なら間違いなく怒っている
こんな好奇の目に晒されて
喜ぶ女の心境がわからない
料亭で食事を済ませると
「飲みに行くでしょ?」
会話の続かない俺と居て何が楽しいのか
ヘラヘラとよく笑う馬鹿女
後一軒だと納得させると
繁華街へ足を進めた
夜の繁華街が一番賑わう時間
もちろんすぐさま人集りが出来
なかなか思うように歩けない
嫌々エスコートする俺の携帯が振動して歩きを止める
【工藤颯】
「見つかったか」
(はい)
「直ぐに捕まえろ」
(はい、すぐに)
胸の中のつっかえが外れ
心底ホッとする
「機嫌直ったの?」
間近の女が薄く笑った
「あ゛?」
お前になんの関係がある
そう思って睨みつけると
「ま〜怖い」
戯けたように髪を掻きあげた
その様子を見ながら・・・ふと
愛の髪型に似てると思った
ただそれだけ
似てる・・・そう思った
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