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愛を寝室に寝かせると
ピッタリと寄り添う
碧斗から聞いた陽菜ちゃんの話と同じ
愛の頬に残る涙の筋に胸が締め付けられる
眠ったまますり寄ってくる愛を抱きしめながら
涙の理由を聞く方法をずっと考えていた
やがて答えも出ないまま
愛の長い睫毛が持ち上がり
少し腫れた目が開いた
「愛」
愛しい名前を呼ぶと
「ん?」
いつもの可愛い声が返ってきた
「大丈夫か?」
身体のことを聞いたのに
「夢かと思った」
「夢?」
「ううん、なんでもない」
愛の口からは夢の延長のような
よく分からない返事
「颯は?」
「ここには居ねぇ」
「一平もう帰って良いよ、颯呼ぶから」
「あ?」
「あの女の人待ってるでしょ、帰って」
完璧に勘違いしている様子の愛に胸が締め付けられる
「あれは、置いてきたから待ってねぇ、それに・・・愛より優先することなんて何もねぇ」
ちゃんと説明したいのに
「嘘!」
「あ?」
「私より優先してたじゃない、あの女の腰を抱いて一平って呼ばせてた!
組長に呼び出されて出かけたくせに
私がマンションに居ない事にも気づいてないっ
もしあの場所で会わなければあの女を抱いたんでしょっ」
急に声を荒げた愛は
完全に違う受け取り方をしていた
興奮状態の愛に弁解という説明をしたいけれど
勢いで肩まで揺れる状態で話すのは良くないとブレーキをかけた
でも・・・
それが俺を苦しめるブレーキになるとは
愛の口から
「さよなら」を聞くまで
気付かなかった
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