家業

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高校に入学すると同時に田嶋の家を出て一人暮らしを始めた此処 特に深い理由があるわけではない 父から言われただけ 高校生の小娘一人で安心な理由は 常駐のバトラーや付き人が 生活の全てを支えているからである もちろん 家に居るよりもずっと快適で気に入っている 繁華街近くにありながら 他を寄せ付けないように緑に囲まれている敷地は郊外が苦手な私の希望だった ハイテク機器を取り込み 普通より特殊な造りの此処は鉄壁の要塞 プライベートガーデンや地下駐車場、エントランスに至るまでニノ組のガードが立っていて 蟻一匹も入ることを許さない 設計の段階から口を挟み 私の希望をより多く取り込んだ上に 住み始めてからも更に改造も施す程入れ込んでいる 下層階にはガードやバトラーの部屋が並び 武道場やジム、会議室までもある この要塞だけで父の仕切るニノ組の半数を預かっている 私の居住スペースである最上階までは 二度エレベーターを乗り換える 普段は学校と一階下の付き人が暮らす部屋との行き来以外で外へ出ることはしない その分こだわったのは 最上階の1/3を占めるルーフバルコニー 周りに遮るものの無い開放感は 何よりも私の心を掴んで離さない リビングの大きな窓の外には 態々屋根を付けたソファスペース そこを抜けると屋根のない広い空間 落下防止の手摺りにもこだわりの素材を使った ここまでこの要塞にこだわる理由 それは 西の街を治める 龍神会の要の基地だからだ
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