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さて、こちらは大みみずでございます。
「ふう、ふう。暑いぞ、熱いぞ、ふう、ふう、ふう」
みみずは普段、暗くてじめじめした土の中をのらりくらりとしておりますから、こんな真夏の干からびた土の上は息苦しくて仕方がないのです。
今まで燦々と降り注いでいた太陽も、みみずにとっては恵みの光でもなんでもなくて、ただ迷惑な死の照射でしかありません。まるで鉄板の上で熱せられたステーキ肉のような心地で、もうここまでかと諦めかけておりました。
「……おや?」
するとどうでしょう。一点にわかにかき曇……ったようでもないのに、清浄な黒い影が身体に差したのに気がつきました。みみずは視力はたいへんに悪いですが、明暗にはかえって敏感なのであります。
「なんという素晴らしい暗闇だ! これは助かるぞ」
ようやく生きる希望の一端を掴んだ大みみずは、なんとか元気を出して地面の下の薄暗いところへ戻ろうと身を捩り始めました。
「ああぼくは油断をしていた。ぼくもこんなに太くたくましくなるまで生きていたから大丈夫だと思って、昨日はついつい度が過ぎてしまったのだ」
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