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みーくんと乙女の涙
ある日のことでございます。麦わら帽子の乙女が近所の公園の遊歩道を独りでぶらぶら歩いておりました。あたりの樹々は涼し気な陰を作り、風はそよそよと青い葉の間を通り抜け、くすぐられた木の葉たちが恥ずかしそうに身を揺すってはカサカサと音を立てました。そしてその樹の太い幹からは、うっとりするような妙なる蝉の音色が、夏の盛りを告げてどこまでもどこまでも響き渡っておりました。
公園はちょうど、朝と正午の境目なのでございましょう。
乙女はふと、足元の自分の影を見つめました。夏の日差しが強くて、影が墨のように黒ぐろと遊歩道にこびりついているのが珍しかったのでありましょう。
「あら?」
乙女は目を瞬いてそこにしゃがみ込みました。乙女の可憐なサンダルの足元に、みみずがいっぴき、息も絶え絶えに伸びておりました。
びろんと腹をさらして、干からびかかっているのです。
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