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「·····っ」
僕はカーテンから差し込む朝日で目覚めた。上体を起こし、手を組み伸びをした。ベッドから出てカーテンを開ける。一気に差し込む光に思わず目を細くする。
「今日も良い朝だ」
そう言って微笑む。服を着替え1階のリビングに行く。
「おはよう」
そう言ってリビングのドアを開け中に入ると皆が挨拶を返してくれる。もう既に皆揃っていた。
珍しいな。萌姉(もえねぇ)と天兄(そらにぃ)が先にいるなんて。
萌姉こと僕の姉、萌葱(もえぎ)は萌葱色の瞳と、ミルクティー色の髪をした。美人さんだ。天真爛漫で笑顔が眩しい、とても優しい人だ。そして天兄、僕の兄の天(そら)は天色(あまいろ)の瞳と同色の髪を持つ、爽やかなイケメンだ。いつも僕のことを第一に考えてくれるとても良い人だ。でも二人共、なぜか僕のこととなると少し性格が変わる。
「萌姉と天兄が先にいるなんて珍しいね」
そう微笑みながら言うと、二人共僕に抱きついてきた。
「だって、今日から藤華寮生活で寂しいんだもん!!」
「そうだぞ!それに男子校だから心配で心配で!!」
「ふふっ、大丈夫だよ。でも心配してくれてありがとう。僕も寂しいよ。」
そう言うと、僕から離れ膝から崩れ落ち、「なんでこんなに可愛いんだ!!」とか「天使!!」とか叫んでいた。
ふふっ、今日も元気そうで良かった。でも、急にどうしたんだろう?
そんなことを考えながら席につくと、僕の専属執事の聖 奈緒(ひじり なお)が笑顔で話しかけてくる。奈緒は黒目で焦げ茶色の髪のこれまた美形の人だ。ちなみに僕と同じ歳で明日から同じ高校に通う。
「おはようございます。藤華様。今日の朝食はフレンチトースト、葉野菜のサラダ、スクランブルエッグでございます。今日のお飲み物はどういたしましょう」
「おはよう、奈緒。今日はアッサムでお願い」
「かしこまりました」
そう笑顔で言うと紅茶を入れに行ってくれる。
「初幸(はつゆき)君のところだから大丈夫だろうけど本当にこの学校で大丈夫?」
そう不安そうに聞いてくるお母さん。お父さんも心配そうな表情をしている。
「大丈夫だよ。どうしてそこまで聞いてくるの?」
そうずっと疑問に思っていたことを聞く。
「だって藤華ったらこんなに可愛いうえに優しいし、頭も良いし、華奢なのに運動もできて完璧でしょ?なのに無自覚で人をたらしこみやすいから男子校になんて行ったらすぐ男達の餌食になりそうで、すっごく心配!!」
そう早口で言うお母さんにその場に居る、兄姉や、お父さん、使用人の人達までもが頷く。
皆優しいな。こんなに心配してくれて。
僕はそう呑気に思っていた。
「大丈夫だよ。何かあったら必ず連絡するし、休みの日とか帰ってくるから」
そう言うと少しだけ納得してくれた。
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