第1話

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それに対して夏樹君も 「俺は宮古 夏樹だ!·····です。よろしくな!·····お願いします」 そう言って、頭を下げた。 さっきから思ってたけど、夏樹君って····· そんなことを考えていると、初幸君が「じゃあこの学園のことについて話すぞ」と言うので意識を初幸君に向け、ソファーに座る。 「まず、この学園は──と、こんな感じだ。解らないことは有るか?」 そう初幸君が聞くので僕は「ないよ」と答えた。二人もなかったようで何も言わない。 「で、このカードはこの学園でのキャッシュカードみたいな役割りをする物だ。無くすなよ」 そう言って、カードを渡してくれる。そして僕はふと、あることに気付く。 「ねぇ、初幸君。僕のだけ色が違うけど」 そう言って、カードを見せる。 「あぁ、首席だからな。色々特別待遇があるんだ。一人部屋とか、学費免除とかな。詳しくは学園ホームページの特待生・首席の特別待遇についてってページで見ておけ」 「うん、分かった。」 後で見ておこう。 その話が終わった途端、初幸君と天兄の表情が暗いものに変わった。そして、初幸君が重苦しい雰囲気のまま、口を開いた。 「で、だ。ここからが一番大事な話になる。この学園は初等部から大学院まであって、エスカレーター式だ。そして中等部から全寮制。つまり、思春期を男ばかりの環境で暮らすことになる。だから、その、そういう対象も自然と、な。その」 珍しく初幸君の歯切れが悪い。でも、初幸君の話を察するに、つまりは 「つまり、同性愛者が多いってこと?」 「そうだ」 僕がそう言うと初幸君が暗い表情のまま肯定する。 「そんなに深刻そうに言うってことは、何かあるの?」 「あぁ。今では減ったが、制裁と称して強姦する奴らなんかがいてな。親衛隊って言ってな。それでなくても、顔の良い生徒を強姦しようとする奴らもいる」 それを聞いて、どうしてあんなに暗かったか分かった。 そうか、心配だったんだ。 「そう言うことだったんだ。心配してくれてるんでしょ?」 そう言うと初幸君達は、ホッとした顔をしていた。 やっぱりそうだ。 そして僕は言葉を続ける。 「奈緒を」 「そう·····って、は!?」 初幸君達や奈緒、夏樹君までもが驚いた顔をした。 「いや、確かに奈緒も心配だぞ?だけどな、なんで奈緒『だけ』なんだよ」 「え?だって奈緒美形さんだし·····あ、そっか、そういうことか」 そう言うとまたも、安心した顔をする。 「夏樹君だね」 「ちがーう!!」 そう言うとその場にいる皆が、一斉に立って食い気味に否定してくる。 「だいたい何で俺なんだ!?」 そう聞いてくるので僕は 「だって夏樹君、変装してるでしょ?」 そう言った。
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