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すると、宮古君が叫びだす。
「あ!な·····三澤先輩!そっちの笑顔の方が何倍も良いぞ!さっきのは嘘くさかったからな!」
「っ!!私の笑顔に気付いたのは貴方が初めてです。気に入りました」
そう言って三澤先輩は宮古君近づく。そこで奈緒に耳栓をつけられ、さらに目を隠される。ビックリして思わず声をあげる。
「え!?奈緒!?どうしたの!?」
そう聞くが、耳栓をしているためなにも聞こえない。でも、すぐにはずされた。そして奈緒は
「必要なかったみたいですね」
そう言って宮古君達の方を見る。そこでは、和気藹々と楽しそうに話している二人。
もう仲良くなったんだ。早いな〜。楽しそう。ふふっ
なんて思っているが、先程のことを思い出し、奈緒に問う。
「ねぇ、奈緒。さっきどうして耳栓と目隠し·····」
すると奈緒はふっと笑って、優しく微笑み言う
「藤華様は知らなくて良いんですよ」
「?」
もっと分からなくなっただけだった。すると三澤先輩が話し掛けてくる。
「では、そろそろ行きましょうか」
それに「はい」と頷いて歩きだす。
「な、なぁ」
歩き始めて間も無く宮古君が話し掛けてきた。
「どうしたの?宮古君」
僕は同学年だと分かったのでタメ口で聞いた。
「下の名前で読んでも良いか?」
「うん、良いよ。じゃあ僕も夏樹君って読んで良いかな?」
そう言って微笑むと、夏樹君は嬉しそうに「あぁ!」と言ってくれる。
そうして僕達は理事長室までの長い廊下を、時々三澤先輩や奈緒も交えて話して歩く。
今日はまだ春休みのため、校舎に人はいなかった。そして15分程してようやく理事長室に着いた。そこで三澤先輩がなにかを落としたのに気が付いた。3人は気付いていないようだったので、僕が拾う。
「理事長室に着きましたよ。では、私はここで待っているよう言われてますので。」
そう言って理事長室の扉を掌を上にして示す。でも僕は三澤先輩に落としたものを渡したかったので、「先に中に入ってて」と言う。二人が入ったのを確認して、三澤先輩に近づく。
「三澤先輩、これ、落としましたよ。」
そう言って三澤先輩の落とし物·····懐中時計を渡す。その懐中時計は少し汚れているが、蓋にとても細かく、綺麗な細工が施されている素敵なものだ。
「!ありがとうございます。これはとても大切な物なので。」
そう言って優しい手つきでそれを受け取り、微笑む。
「やっぱり、綺麗だ·····」
「へ?」
三澤先輩はそう間の抜けた声を出した。そこで自分が思っていたことを口に出していたことに気付く。
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