第1話

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すると、宮古君が叫びだす。 「あ!な·····三澤先輩!そっちの笑顔の方が何倍も良いぞ!さっきのは嘘くさかったからな!」 「っ!!私の笑顔に気付いたのは貴方が初めてです。気に入りました」 そう言って三澤先輩は宮古君近づく。そこで奈緒に耳栓をつけられ、さらに目を隠される。ビックリして思わず声をあげる。 「え!?奈緒!?どうしたの!?」 そう聞くが、耳栓をしているためなにも聞こえない。でも、すぐにはずされた。そして奈緒は 「必要なかったみたいですね」 そう言って宮古君達の方を見る。そこでは、和気藹々と楽しそうに話している二人。 もう仲良くなったんだ。早いな〜。楽しそう。ふふっ なんて思っているが、先程のことを思い出し、奈緒に問う。 「ねぇ、奈緒。さっきどうして耳栓と目隠し·····」 すると奈緒はふっと笑って、優しく微笑み言う 「藤華様は知らなくて良いんですよ」 「?」 もっと分からなくなっただけだった。すると三澤先輩が話し掛けてくる。 「では、そろそろ行きましょうか」 それに「はい」と頷いて歩きだす。 「な、なぁ」 歩き始めて間も無く宮古君が話し掛けてきた。 「どうしたの?宮古君」 僕は同学年だと分かったのでタメ口で聞いた。 「下の名前で読んでも良いか?」 「うん、良いよ。じゃあ僕も夏樹君って読んで良いかな?」 そう言って微笑むと、夏樹君は嬉しそうに「あぁ!」と言ってくれる。 そうして僕達は理事長室までの長い廊下を、時々三澤先輩や奈緒も交えて話して歩く。 今日はまだ春休みのため、校舎に人はいなかった。そして15分程してようやく理事長室に着いた。そこで三澤先輩がなにかを落としたのに気が付いた。3人は気付いていないようだったので、僕が拾う。 「理事長室に着きましたよ。では、私はここで待っているよう言われてますので。」 そう言って理事長室の扉を掌を上にして示す。でも僕は三澤先輩に落としたものを渡したかったので、「先に中に入ってて」と言う。二人が入ったのを確認して、三澤先輩に近づく。 「三澤先輩、これ、落としましたよ。」 そう言って三澤先輩の落とし物·····懐中時計を渡す。その懐中時計は少し汚れているが、蓋にとても細かく、綺麗な細工が施されている素敵なものだ。 「!ありがとうございます。これはとても大切な物なので。」 そう言って優しい手つきでそれを受け取り、微笑む。 「やっぱり、綺麗だ·····」 「へ?」 三澤先輩はそう間の抜けた声を出した。そこで自分が思っていたことを口に出していたことに気付く。
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