二日目の酒

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二日目の酒

二日目。旅人がバーに入ると私は前の日と同じく、すぐにお酒を差し出した。 名前は「ジン・トニック」 「単純なのに逆に難しいといわれるカクテルにはなくてはならないものです。 そして、これでバーテンダーの腕前がわかるともいわれています...」 「ただ...私はバーテンダーの感情がこのカクテルの味を 左右すると考えています。」  「ほう...」 「私の感情を楽しんでください。」  旅人が一口飲むと悲しいようなひんやりとした味が、 二口飲むと苦くそれでいて懐かしい。そう、まるで勇気のような味がした。 すべてを飲むとその二つの感情みたいなものがまるで一つになったような、 完璧な味になった。「大丈夫ですか?」  「え?」旅人はその瞬間やっと 自分が泣いていることに気づいた。私が渡したハンカチで旅人は涙を 拭きとりながら私の手を握りしめた。「ありがとう明日で最後になるよ」 と言い残しバーを出て行った。
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