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最後の酒
その日、旅人はいつにもなく重い足どりでバーに向かっていった。
自分が今日死ぬのかと自問自答しながら。
だけど自分のためにオリジナルのカクテルを造ってくれるバーの店長のために
恐怖をぬぐいながら最後のバーに向かった。するとそこではバー店長がものすごい速さでお酒を造っていた。こちらに気づいてもいない様子だったので旅人は近くの椅子に座った。よくみると酒造りは本当にすごい。
派手に作っているかと思いきやぴったりと調合し、速やかに作り上げる。
そうしてできた酒は「テキーラサンライズ」
「オレンジジュースとグレナデンシロップを混ぜた明るい色の酒です。」
私は言った。そして旅人はそれを一気に飲み干した。
すると明るく暖かくてそれでいて一度もなかったような味がした。
そして遠くにバーの店長が見えた気がした。
「そして最後に私からメッセージです。」はっ、と気づいた旅人に向かって私は涙を流していた。そして今にも泣きくずれそうに震えながら言った。
「どうかあなたもこのテキーラサンライズのように
また夜明けが来ますように...」それからしばらくして旅人はにかっと笑って
「ありがとな!」と大きな声で笑いながら言った。
そして静かに旅人はバーを出ていった。
さっきまで旅人が飲んでいたテーブルがわずかに濡れていた。
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